2024年10月19日(土)、群馬交響楽団「第602回定期演奏会」は、”夜をテーマにした4つの音世界”。最後はデイヴィッド・レイランド指揮によるリムスキー=コルサコフの交響組曲《シェエラザード》で、見事に締めくくりました。
<今日のプログラム>
1 モーツァルト:歌劇《魔笛》序曲
2 ブリテン:深紅の花びらは眠りにつく(日本初演)
3 ブリテン:ノクターン
→テノール/マーク・パドモア
4 リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》
→コンサートマスター/伊藤文乃
指揮者/デイビッド・レイランド
今回のコンサートは、”夜をテーマにした4つの音世界” としてプログラミングされています。
1曲目のモーツァルト:歌劇《魔笛》序曲は、夜の女王が支配する異界での出来事
2曲目と3曲目のブリテンは、まさに「夜の帳(とばり)」の音楽です。
ノクターンは、イギリスの8人の詩人の詩による歌曲集です。シェリー、テニスン、コールリッジ、ミドルトン、ワーズワース、オーウェン、キーツ、最後はシェイクスピアというオールイングランドの豪華詩人達が登場します。それらがノクターン(夜想曲)としてつながっています。
会場では、歌詞対訳が配られたので、歌詞の内容を確認しながら聞くことができました。8曲目のシェイクスピアのソネット「目をつぶっているときが、(あなたを)一番よく見える」が印象的でした。「あなたを見なければ、一日中夜と同じ」まさに、ノクターン(夜を想う音楽)として、全曲が終わりました。
テノールのマーク・パドモアは、ロンドン生まれで、ブリテンの音楽を敬愛し熟知していることが伝わってきました。ドラマティックな歌唱と群響によるメリハリの利いた演奏にもかかわらず、イギリス紳士の気品ある佇まいが全体を支配していました。
4曲目のリムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》は、「千夜一夜物語」からのエピソードを抽出して編み出されました。シェエラザード妃からシャフリアール王に夜ごと語られた物語として、シェエラザードのテーマ(旋律)は、ヴァイオリン・ソロで奏でられます。
今日の演奏では、群響のコンサートマスターである伊藤文乃さんのソロが、優しく、それでいて芯のある演奏で、生身のシェエラザードの切ない心情を連想させてくれました。それによって、曲全体のトーンが決まり、筋の通った一つの物語として響きました。コンサートマスターである伊藤文乃さんは、今の群響にとって、まさに適任、なくてはならない存在であると感じました。
11月の定期演奏会では、ブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」で伊藤さんがヴァイオリン・ソロを務めることになっていますので、今からとても楽しみにしています。
指揮者のデイビッド・レイランドさんは、ベルギー出身ですが、イギリス音楽にも造詣が深い感じがしました。イギリスの古楽器オーケストラ「ジ・エイジ・オヴ・インライトゥンメント・オーケストラ」の指揮者も務めており、ブリテンとの相性は抜群でした。
メリハリのある的確な指揮で、ぐいぐいと群響のポテンシャルを最大限に引き出してくれました。本当に、聞きごたえのある交響組曲《シェエラザード》でした。
今日も、大満足で帰途につきました。
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