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​身近な風景

  • 執筆者の写真tokyosalamander

群響定期〈日本×スペイン〉

更新日:6月8日

2024年5月25日(土)高崎芸術劇場で、群馬交響楽団「第598回定期演奏会」を聴きました。新進気鋭の原田慶太楼指揮による「次世代を担う演奏家が織りなす〈日本とスペイン〉リズムの躍動!」まさに弾け飛びました。#群響

<プログラム>

・山本菜摘「UTAGE ~宴~」(群響委嘱・世界初演)

・ロドリーゴ「アランフェス協奏曲

 → ギター/ティボー・ガルシア

・ファリャ「バレエ音楽《恋は魔術師》

 → メゾソプラノ/加藤のぞみ

・芥川也寸志「交響曲第1番


新旧、二人の日本の作曲家に、スペインの二人の作曲家の作品がはさまれたプログラムでした。四者四様の独特なリズムが躍動しました。

1曲目の山本菜摘「UTAGE ~宴~」は、群響の委嘱作品で、「群馬に生きる人々の熱気をイメージした1曲です。…群馬のパッションが刻み込まれた「八木節」や「草津節」など、群馬をイメージした響きを曲全体に散りばめられています。」(演奏会のパンフレットより)山本さんは1998年生まれの若手で、「UTAGE ~宴~」も若々しく活気に満ちていました。それでいて、歴史や親しみも感じさせる、といういくつものハードルを軽々と超えている現代的な名曲でした。おそらく、群響が海外公演に行く際には、名刺代わりに演奏される曲になるのではないでしょうか。


2曲目のロドリーゴ「アランフェス協奏曲」は、個人的に最も好きな曲です。ナルシソ・イエペス(ギター)、アルヘンタ 指揮スペイン国立管弦楽団による詩情豊かな名演が私の定番です。特に第1楽章冒頭の弦の刻みが最高でした。1994年生まれのティボー・ガルシアの演奏は、軽々とした切れ味があるにもかかわらず、全体としてはふわっと包み込んでくれました。心地よい夕暮れの時間に浸ることができました。ところで、演奏後のカーテンコールで再び登場したガルシアさんに、大きなサプライズが待ち受けていました。なんと、原田さんの指揮で、群響は「Happy Birth Day」を高らかに演奏しました。どうやら、今日はガルシアさんの誕生日だったようです。喜ぶガルシアさんの様子をスマホで撮影しながら指揮をする原田さんのノリの良さには脱帽でした。そのせいか、ガルシアさんはアンコールを2曲も演奏してくれました.。


休憩後の3曲目、ファリャ「バレエ音楽《恋は魔術師》」では、メゾソプラノの加藤のぞみさんが加わりました。全13曲中4曲で歌いました。私は5列目の31番の席でしたが、私の前の座席がたまたま空席であったため、加藤さんが歌う向きがちょうど私とぴったり合い、目が合ってしまうという体験をしました。うかつに居眠りでもしたら大変と緊張しました。加藤さんはオペラ歌手でもあるので、出番の曲まで椅子に座って待っていて、歌い終わってまた席に着くまでの所作が、もう芸術の域に達しており、終始圧倒されました。この曲も古くは、アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団のメリハリのある演奏のイメージが脳内にインプットされていましたが、原田さんの指揮は、リズムをさらに際立たせ、曲の面白さをこれでもかと伝えてくれました。私の中のアンセルメの演奏は、原田さんと群響によって紡ぎだされた原色の音色によって、見事に塗り替えられました。


最後の4曲目、芥川也寸志「交響曲第1番」がやはり最高の聞かせどころでした。芥川也寸志さんは1925年生まれですので、今年は生誕100周年という記念すべき年にあたります。そこでこの曲を取り上げたと、原田さんは開演前の「プレ・コンサート・トーク」で語っていました。この曲を普段耳にすることはまずありませんので、サブスクで予習しましたが、正直、それほど期待はしていませんでした。ああ、こういう曲なのか、という程度の印象でした。特に4楽章がプロコフィエフの交響曲第5番の第2楽章を連想させる類似性があったりしたので、どんな演奏になるんだろうと思っていました。しかし、実際に聞いてみると、全く違った曲に聞こえました。プロコフィエフやショスタコーヴィチの影響を受けていることは明らかでしたが、強烈なアクセントを付けた原始的なリズムを原田さんはさらに強調し、大音響でぶつけてきました。きれいごとではなく、狂気に近い熱狂に包まれ、圧倒されました。こんな凄い曲だったのか、というのが正直な感想です。そして、そうさせたのは原田さんの情熱と的確な指示、それに応える群響のポテンシャルがあったからこそだと思いました。


今日のコンサートは、魅力がぎっしり詰まっていました。これだけのクオリティの演奏が、毎回聞けるなんて、群響すごいなと思います。次回の定演も期待しています。


(注)群響では、定期演奏会に限り、終演後のスマホによる写真撮影及びSNSへの投稿が推奨されています。これは定期演奏会に行く大きな楽しみの一つで、そのために毎回5列目の中央右寄りの席(B席4000円)を取っています。なお、6列目になるとA席5000円になるので、コスパも最高です。


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