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​身近な風景

執筆者の写真tokyosalamander

第5回 高校生両生類サミット

2024年11月4日(祝)、「第5回 高校生両生類サミット」がオンラインで開催されました。佐野高校の科学部は5年連続で発表しています。

佐野高校科学部の発表は「トウキョウサンショウウオ幼生の共食いと頭でっかち型について」でした。

日本全国の中高生から、イモリやサンショウウオ、カエルなど、両生類に関する非常にレベルの高い発表がありました。


発表①岐阜県立大垣北高等学校(岐阜県)

「岐阜のオオサンショウウオを守る!~国産個体の生息地を交雑オオサンショウウオから取り戻すために~」

「故郷『岐阜』のマホロバサンショウウオはどこからやって来たのか?」


発表②瀧川学園滝川中学校(兵庫県)

「アカハライモリの生態調査~幼体期の飼育法から生態保護と医療研究への貢献を探る~」


発表③仙台城南高等学校(宮城県)

「トウホクサンショウウオの変態の条件を探る」


発表④米沢興譲館高等学校(山形県)

「山形県置賜地域におけるセンザンサンショウウオとバンエツサンショウウオのmtDNA塩基配列解析及び生息域調査」


★発表⑤栃木県立佐野高等学校

「トウキョウサンショウウオ幼生の共食いと頭でっかち型について」


発表⑥津田学園中学校・高等学校(三重県)

「流水性卵生ナガレヒキガエル幼生の分布様式に及ぼす河川流の影響」


佐野高校2年生の中村さんと大川さんによって、15分間の発表と10分間の質疑応答が行われました。

小型サンショウウオの多くは、幼生の時に共食いによって成長しています。また、北海道に生息しているエゾサンショウウオは、幼生時に同所的に生息しているエゾアカガエルの幼生(オタマジャクシ)をエサとして捕食することが知られています。


先行研究では、エゾアカガエルの幼生を捕食するエゾサンショウウオの幼生は、捕食しやすいように頭部が大きくなる現象が報告されています。それを「頭でっかち型」と呼んでいます。佐野高校の科学部では、トウキョウサンショウウオでも「頭でっかち型」が存在するかどうかをテーマに、昨年度から研究を継続しています。

昨年度は、文字通り、頭部が大きい個体が出現するかどうかに着目していましたが、今年度は、頭部の大きさではなく、形に着目しました。つまり、エゾサンショウウオの幼生が、エゾアカガエルの幼生を捕食するためには、頭部そのものを大きくすることによって適応してきましたが、トウキョウサンショウウオ幼生はカエルのオタマジャクシを捕食することはなく、同種の幼生を共食いしています。つまり、頭部そのものを大きくしなくても、口が大きく開けるように頭部の形を変形させることで対応できるのではと考えました。


そこで、トウキョウサンショウウオの幼生での「頭でっかち型」を再定義し、頭部の形によって、「台形型」が頭でっかち型に相当する、という仮説を立てました。


室内飼育実験と野外での幼生調査を行い、幼生の生息密度が高い環境では、台形型が多く出現し、速く成長し、変態・上陸することがわかってきました。

これは、とても興味深い研究だと思います。

発表後の質疑応答では、多くの中高生や大学の先生から、質問やアドバイスをいただいていました。とても大きな反響がありました。中村さんと大川さんは、多くの質問にも怯むことなく堂々と答えていました。素晴らしい発表だったと思います。


最後に、全体講評として、日光にある「日本両棲類研究所」の篠崎尚久先生のお話がありました。

篠崎先生からは、自然の「保護」と「保全」とは別物で、分けて考えることが必要だというお話がありました。「保全」は、人の手が加わることで守られており、中高生がどのように関わることができるかを考え、行動してほしい、というアドバイスをいただきました。また、近年は地球環境が大きく変動しており、雨の降り方などの影響を最も受けやすいのは両生類であるというお話も印象に残りました。とても素晴らしい全体講評でした。今日の「高校生両生類サミット」の成果をしっかりと受け止めるとともに、私たちが目指す一歩先の風景をも示してくださいました。


中高生のみならず、アドバイザーとして参加してくださった多くの研究者にとっても、大きな励みとなる、素晴らしいサミットでした。


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