2024年9月9日(月)朝8時頃、渡良瀬川沿いの遊歩道では、紫色の花が盛りを迎えていました。秋の七草の一つに数えられる「クズ」の花です。
花びらが歩道の上に散っていました。
視線を花びらの上の植物に向けると、樹木の表面をクズの葉が覆い隠しています。
クズは、つる性の多年草で、林や斜面を覆うように生育しており、「マント群落」を形成しています。まさに全体をマントのように覆い隠しています。下の写真の下半分は、クズで覆われた「マント群落」です。
一見すると、外来種のような雰囲気もありますが、れっきとした在来種です。
クズは、奈良時代の貴族で歌人として知られる山上(やまのうえの)憶良(おくら)によって、「秋の七草」の一つに数えられています。
「万葉集」には、山上憶良の2首が収録されています。
「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
(秋の野に咲いている草花を指折り数えると7種類ある)
「萩の花 尾花 葛(くず)の花 撫子(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし) また 藤袴(ふじばかま) 朝顔の花」
ここで、尾花はススキ、朝顔はキキョウであるとされています。3番目に挙げられているのが、「クズ」の花、というわけです。
クズは、人間との関りが深く、大きく肥大した塊根から「葛粉」(デンプン)が取られています。葛粉から、葛湯、葛切り、葛餅、などが作られています。
また、根を乾燥させたものを「葛根」と呼び、漢方薬「葛根湯」の原料にもなっています。さらに、花を乾燥させたものを「葛花」(かっか)と呼び、二日酔いの民間薬とされてきました。
それだけでなく、クズのつるは、籠の材料になったり、クズの繊維で編んだ布は葛布(くずふ)として現代にも伝わっているそうです。
こうしてみると、これほど人間生活との関わりが深い植物は珍しいのではないでしょうか。
佐野市の「葛生」という地名も、もしかしたら、「葛が生えている土地」という由来があったのかもしれません(今のところ、推測です)
ようやく、「秋の七草」の花が咲く季節になってきました。朝の散歩で、季節の移ろいを感じています。
Comments