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​身近な風景

執筆者の写真tokyosalamander

両生類ってどんな生き物? ③サンショウウオって‥

2024年8月10日(土)13:30~15:00 栃木県立博物館で、林光武さんによる講演会が開催されました。栃木県立博物館友の会と栃木両生爬虫類の会の共催による特別講演会(3回シリーズ)の最終回「両生類ってどんな生き物? ③サンショウウオって‥」でした。


開会に当たって、講演会を主催した「栃木両生爬虫類の会」の代表である中島さんから挨拶がありました。「林さんは会を立ち上げた中心メンバーで、みんなの拠り所として頼りになる存在です。今日は3回シリーズの最終回ですが、この先があることを信じています。」として林さんにつなぎました。

今回も多数の参加者がありました。この中には、林さんと一緒に活動されてきた方に加えて、小学生・中学生・高校生といった若い聴衆の姿も見られました。

今回の講演会の内容は、配布された資料に以下のように紹介されていました。

1 「サンショウウオ」って何?

2 サンショウウオ科のサンショウウオの新種記載ラッシュ

3 サンショウウオ科のサンショウウオの特徴

4 サンショウウオ科のサンショウウオを巡って

  ・サンショウウオ漁

  ・サンショウウオの減少と保全


林さんによると、普段話したことがない、初めて聞くような話になるように心掛けたそうです。まずは、「サンショウウオ」って何? から始まりました。

有尾目(尻尾を持つ両生類)がサンショウウオ目とされており、9科823種(2024年8月5日現在)もいるそうです。

世界には様々なサンショウウオ目がいることが紹介されました。

その中で、サンショウウオ科(狭義のサンショウウオの仲間)は10属100種で、日本には、そのうち約半分の51種が生息しています。つまり、日本はサンショウウオの先進地ということになるようです。

続いて、サンショウウオの「新種記載ラッシュ」のお話がありました。


日本には、サンショウウオ研究の長い伝統があり、1943年に佐藤井岐雄著「日本産有尾類総説」が刊行されました。当時、日本産のサンショウウオは16種でしたが、それをこれだけ大部な書物にまとめ、しかも戦時中に発行しました。この書物はサンショウウオ研究者にとってバイブル的なもので、そこに込められた情熱が現在のサンショウウオ研究にも引き継がれているのではないかと思いました。なお、佐藤井岐雄は広島文理科大学(現広島大学)に奉職しており、教授昇進の2日前に原子爆弾に被爆、教授となった3日後に42歳で生涯を終えました。


その後、、2010年には日本産のサンショウウオは21種になりましたが、2024年現在、一気に51種にまで増えました。近年のDNA分析技術の進歩によって識別されるようになったからです。こうした「新種記載ラッシュ」は現在も進行しています。

その一例として、ハコネサンショウウオ属の分類についてのお話がありました。かつては、1属1種でしたが、DNA分析等によって、現在、ハコネサンショウウオ属は7種に分類されています。なお、この研究は小学生の頃から林さんを慕っていた吉川さん(現国立科学博物館)によって成し遂げられています。


次は、日本に生息しているサンショウウオの特徴に関するお話がありました。

成体の外見はよく似ているけれども、産卵場所、卵嚢の形、産み方に多様性がある、ということを実際に林さんが調査に関わった事例などで説明してくれました。現在は、絶滅危惧種の保全という観点から、採集等が許されない種もあります。林さんは大学時代はイモリの研究者というイメージがありましたが、サンショウウオ研究にも深く関わっていたことが伺われました。


ハコネサンショウウオの変わった生態の発見

クロサンショウウオの分布に関する知見

林さんの興味関心の深さと洞察力、行動力が、研究を進める原動力になっていることが伝わってきました。林さんにしかできないお話だと思いました。


最後は、サンショウウオを巡る話題でした。

桧枝岐での山椒魚漁(ハコネサンショウウオ)に関わる興味深いお話に引き込まれました。


県内のトウキョウサンショウウオ及びイワキサンショウウオの保全活動に関わるお話は、今まさに直面している課題について、最新の情報を紹介してくれました。

特に、宇都宮市戸祭山での保全活動は、環境省の手引きで、成功事例の一つとして最初に紹介されています。これは、林さんのサンショウウオを巡る保全活動の集大成ともいえるものではないかと思いました。

こうして、90分間の講演は、あっという間に終わりの時刻となりました。


本講演を振り返って見ると、まず、「サンショウウオ」って何? から始まり、世界中には様々なサンショウウオの仲間が生息している中で、日本はサンショウウオ科サンショウウオの先進地で、まさに世界のサンショウウオ研究を牽引していることがわかりました。そして、そのことは佐藤井岐雄をはじめとする多くの先人たちの情熱を受け継いでいるものであり、林さんもその一人であること。さらには、この会場に集まってくれた参加者にも、将来引き継がれていくであろうことを感じさせてくれました。

以上で、3回シリーズの「両生類ってどんな生き物?」は終了しました。しかし、まだまだ語りつくせないことがたくさんあったと思います。いつの日か、この続編が開催されることを期待しています。林さん、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。



参考までに、全3回の講演会の記事を紹介します。


<第1回:カエルって‥>


<第2回:イモリって‥>







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