トウキョウサンショウウオ生息状況調査2025
- tokyosalamander
- 4月7日
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2025年4月6日(日)、恒例の「トウキョウサンショウウオ生息状況調査2025」を実施しました。栃木両生爬虫類の会が主催し、毎年4月の第一日曜日に開催しています。

トウキョウサンショウウオは、栃木県のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている希少な動物(両生類)です。この調査は、25年以上前から、栃木県南部のトウキョウサンショウウオの主要な産卵地で産卵数(卵嚢数)を定点調査し、生息環境の変化を見ることを通して、本種の生息状況をモニタリングしています。
毎回、興味のある小中高生を中心に、両生爬虫類の専門家にも参加していただいています。今回も20名以上の参加がありました。

まずは参加者全員の顔合わせ(自己紹介)を行いました。その後、トウキョウサンショウウオの生態や繁殖について簡単に説明し、今日の調査の流れを確認しました。今日は佐野市と栃木市の7地点の産卵地で産卵数(卵嚢数)を調査する予定です。

最初は、土地所有者・佐野高校科学部・栃木両生爬虫類の会が連携して整備・管理している産卵場での調査です。昨年はここで卵嚢の大規模な盗難事件があったため、今年は立て看板を立てて、地域住民による監視活動を続けています。

栃木両生爬虫類の会の林さんから、本種の繁殖にとって必要とされる環境について、お話をしていただきました。林さんには、年間を通して水が枯れない産卵場を設計する際、アドバイスをいただきました。


トウキョウサンショウウオの成体(オス)も確認できました。

オスの特徴を下からのぞき込んで確認しています。真剣なまなざしが注がれています。

昨年は卵嚢が盗難されたため8卵嚢しか確認できませんでしたが、今回は74卵嚢を確認できました。
さらに奥の産卵場で調査を行いました。

この場所はかつては100卵嚢を超える規模の産卵地でしたが、乾燥化により産卵できる水域が減少し、近年では数卵嚢しか確認できないこともありました。今回は参加者の卵嚢探索スキルの向上のおかげもあり、28卵嚢を確認できました。久々に明るい話題でした。

栃木両生爬虫類の会の中島さんから、この場所で確認されたカエル類について、説明がありました。ヌマガエルが増えていて、それを捕食するマムシなどのヘビも増えてきている印象がある、といった興味深いお話でした。



人工産卵場の土地所有者である川島さん父娘とは、ここでお別れをしました。
ちなみに、手の平を広げたポーズは、サンショウウオ幼生の外鰓を示していて、この調査の定番ポーズとなっています。
次は、午前中最後の調査地です。

ここは、高速道路の工事で一時は消滅していた産卵地ですが、土地所有者のご厚意で、定期的に除草などをしていただくなど、良好な繁殖環境となっています。産卵数が多いため、人海戦術が最大の武器になります。しかし、探索する時間を30分と決め、その中で集中して作業を行いました。

木の枝に産み付けられた状態で、沢山の卵嚢が見つかりました。

卵嚢には、さまざまなサイズがあります。このように親指大のものもありました。

オス成体2個体と越冬幼生1個体も見つかりました。この場所で越冬幼生が見つかったのは初めてです。

卵嚢の数を計測するため、バットに25個ずつ入れています。
ここでは、337卵嚢が確認できました。栃木県南部の産卵地では、ダントツの産卵規模です。

午前中までの参加の方もいらっしゃいましたので、お決まりのポーズで記念撮影です。皆さん、達成感と充実感で大満足でした。
午後の部の最初は、民家の裏庭にある産卵場での調査です。家の住人によって大切に守られています。


この池では、トウキョウサンショウウオの卵嚢だけでなく、ヤマアカガエルの成体と卵塊も確認できました。
続いて、休耕田跡を流れる水路での探索が行われました。この場所も、高速道路の工事等に伴い乾燥化などが進行していますが、逆に、産卵が可能な場所に集中して産卵する傾向が進んでいます。今回は、10数mの長さの水の流れに100卵嚢を超える産卵を確認しました。



産卵直前のメス個体を発見しました。この時期に見つかることは滅多にありません。

いよいよ、本日最後の調査地点に移動しました。
ここも、かつては100卵嚢を超える大きな産卵地でしたが、今は数卵嚢しか確認することができなくなってしまいました。周囲の乾燥化や産卵地を取り囲んでいるゴルフ場の影響もあるのかもしれませんが、原因はよくわからない、というのが本当のところです。


広い湿地帯を探して、やっと1対(2卵嚢)が確認できました。


この湿地の上流部にある、ため池跡でも3卵嚢が見つかりました。ため池跡は「底なし沼」化していて、調査できるエリアは限定されています。

最後に、一面にカタクリの花が咲いている場所に移動し、今日全体の振り返りを行いました。

今回調査した産卵地は、県南では最大級の規模ですので、合計すると600卵嚢(メス300個体分)を超える数になりました。この数だけを聞くと、ずいぶんたくさん生息しているなあ、と思う人がいるかもしれません。しかし、それ以外の県南の産卵地の多くは壊滅に近い状態になっています。つまり、定点調査しているこれらの産卵地は、いまや「最後の砦」でもあるのです。
今日調査した産卵地の多くは、土地所有者などによって大切にされており、それが保全活動の要ともなっています。毎年の調査によって、特に若い世代には、本種の生息する環境について知ってもらうことを通して、身の回りの自然環境への意識を高めることに繋がればいいなと考えています。
参加者の多くは、初めて参加した方でしたが、皆で感想を述べあい、また来年も参加したいと言ってくれました。雨が予想されていましたが、絶好の観察日和となり、気持ちの良い一日を過ごすことができたことは、とても良かったです。

毎年、スイセンの花を前に記念撮影をしています。このスイセンも土地の所有者によって大切に育てられています。サンショウウオ幼生の外鰓ポーズも決まりました。
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