2024年8月17日(土)、新顔の「はなび」さんから、廊下で力尽きていた昆虫が、蝶なのか蛾なのか、教えてほしいという依頼がありました。そこで、昆虫に詳しい友人Kさんに問い合わせたところ、正体が判明しました。
「サトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰蝶)(タテハチョウ科)の仲間です。里山などでは普通に見られて、樹液によく集まっています。ヤマキマダラヒカゲ(山黄斑日陰蝶)というよく似た種もいますが、サトキマダラヒカゲよりも山地性です。しかし、栃木県では同所でも見られたりします。」という回答をいただきました。つまり、蛾ではなく、蝶である、というのが正解ということになります。
しかし、地味な模様と色合いをしているので、「これは蝶ではなく蛾なのでは?」と疑問を持たれるのは当然かと思います。そもそも、蝶と蛾の違いって、何なんでしょう。
蝶と蛾の違いの一般的なイメージとして、
1 蝶は美しくて、蛾は毒々しい(地味な)模様をしている。
2 蝶は昼に飛んで、蛾は夜に飛ぶ。
3 触覚の先端の形状が違う。
などが、あげられますが、例外もあり、蝶と蛾の違いは学術的には明確ではなく、本質的な違いではないそうです。確かに、美しいかどうかの判断や、飛ぶ時間帯の境目を考えると、きっちりとした線引きは難しそうです。
日本を始め多くの国々では、蝶は魂が姿を変えたものと考えられてきました。人の体から抜け出た魂が蝶の姿になって人の目に見える、というわけです。そこでは、蝶と蛾を区別していたわけではなかったようです。
江戸時代の頃に日本にもたらされた博物学が広く浸透するに従って、蝶(Butterfly)と蛾(Moth)を区別するという概念が浸透していきました。
その際、分類学的に蝶と蛾を明確に区別できていれば、スッキリしていたと思いますが、残念ながら、例外なく区別できませんでした。人間が抱いていたイメージを分類に落とし込むことはできなかったのです。そのことを今も引きずっているのではないかと思います。
今回のサトキマダラヒカゲは、夕方になると活発に飛び回るそうですが、死骸からはそこまではわかりません。夕方、というのも微妙ですよね。結局のところ、その種が分類学上、〇〇チョウ科に属しているか、〇〇ガ科に属しているかで、蝶か蛾かを判断するしかなさそうです。
「はなび」さんが抱いた疑問は、すべてを明確に分類することで安心したいという人間の持つ欲望に根差しているような気がしました。「はなび」さん、ありがとうございました。
Comments