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  • 執筆者の写真tokyosalamander

「群響定期」新シーズン幕開け

更新日:6月8日

2024年4月20日(土)高崎芸術劇場で、群馬交響楽団「第597回定期演奏会」を聴きました。81歳スイスの巨匠・タバシュニクの指揮によるブラームス「交響曲第1番」は、新シーズンの幕開けに相応しい怪演でした。

今回のプログラムは、

シェーンベルク/5つの管弦楽曲

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」(ピアノ:ティル・フェルナー)

ブラームス/交響曲 第1番 

指揮者のタバシュニクは、現代音楽のスペシャリストで、数多くの初演も手掛けています。また、ご自身も作曲家として多数の作品を残しています。


第1曲:シェーンベルク/5つの管弦楽曲は、まさに指揮者の得意中の得意分野からの選曲でした。しかし、私にとっては耳慣れない曲でしたので、演奏がすごくよかったかどうかはわかりませんでした。正直、約20分後に「やっと終わった」という印象でした。


第2曲:ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」でのピアニスト、ティル・フェルナーは、JSバッハやベートーヴェンの演奏に力を入れています。演奏は自信と余裕に満ちていて、一音一音がゆっくりくっきりはっきりと聞こえてきました。皇帝というイメージの仰々しいものではなく、あたかもバッハのピアノ曲を聞いているような見通しの良いクールな演奏でした。かのグレングールドが弾いたらこんな感じになるのでは、という印象でした。オーケストラは、ピアノの後ろから控え目に聞こえ、終始、ピアノが主人公でした。演奏時間も約40分と長めでした。

アンコールに、シェーンベルクの「6つの小さなピアノ曲」を演奏しました。たどたどしい日本語で曲名を伝える満面の笑みに、本当はこっちの方が弾きたかったのではとも思いました。事実、皇帝よりも楽しそうに弾いていました。


そして第3曲:ブラームス/交響曲第1番は、まさに本日のメインプログラムでした。演奏後、客席は大興奮に包まれました。

それまでの2曲の印象からすると、指揮者のタバシュニクは現代音楽のスペシャリストで、ピアノ協奏曲もかなり分析的な演奏だったので、最後のブラームスも、現代音楽の視点から分析したクールな演奏になるのではないかと予想していました。しかし、曲の出だしから、その予想は間違いであることに気付きました。

ゆっくりとしたテンポで始まり、低音をばりばり響かせ、流れるようなメロディーラインを作っています。随所にタメを作ったり、テンポを急に落とし徐々にテンポアップして聴かせどころを盛り上げるなど、まさに聴衆が聴きたい演奏が生まれていました。ここまでいくと、ド演歌を聴いているような感じに、どっぷりとハマりました。

この曲には、有名なバイオリンのソロがありますが、それも見事でした。そのほか、オーボエやホルンのパートでも、ノーミスで魅力を際立たせてくれました。

第4楽章では、悠然とした大河の流れのように、音の塊が怒涛のように押し寄せ、最後のコーダでそれは頂点に達しました。あちこちから、ブラボーの声が飛び交いました。

群響がこんな分厚い響きを出せるのか、という驚きもありました。第1曲、第2曲での慎重な演奏をかなぐり捨て、多少は乱れても構わないくらいの壮絶な演奏に、お客さんも大満足でした。

指揮者のタバシュニクさんは、何度もカーテンコールで呼び出されていましたが、最後は、ハンカチを取り出し、聴衆にサヨナラを告げて去っていきました。81歳とは思えない只者ではない指揮者に酔いしれました。終演は予定時刻を30分近く過ぎていました。私も帰りの電車を1本遅らせましたが、その価値のある素晴らしい演奏会でした。


(注)群響では、カーテンコール後のスマホでの写真撮影とSNSへの投稿が奨励されています。



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